私は、映画はもう7~8年見たことがない。小学生高学年ごろ、今からもう55年も昔のことになってしまったが、歩いて15分ぐらいのところに映画館があって、父によく連れて行ってもらったものだ。内容は、たいてい時代劇か、西部劇で、東宝か東映かまた大映なのか忘れてしまったが、映画の始まりが波が岩に砕け散るシーンであったのしか覚えていない。また西部劇のスタート画面も、総天然色の広大な原野と真っ青な大空が映し出されていたのを覚えている。
さて、「おおかみこどもの雨と雪」であるが、ほぼ満席で、我々の席は一番前、いわゆる「かぶりつき」であったが、それほど首も痛くならずに、まあまあ快適に見ることができた。最近の映画館の客席はその辺をちゃんと考えた設計になっているようだ。
内容は、インターネットで検索をすればたくさん出てくるので、ここでは書かない。しかし、インターネットの書き込みを見ると、あまり評判は良くないようだ。評価点が100点満点で40点というのもあった。要するに、主人公の一挙手一投足を見て、内容が現実離れ、浮世離れしすぎている、足が地についていない、などというものがほとんどである。確かに言われてみればそうかもしれないが、私にとっては、そんなに悪い印象はなかった。もともと、小説でも映画でも中身は言ってみればどれも「フィクション」であり、多少、と言っても人によってその許容限度にはいろいろあると思うが、少々の「現実離れ」はやむを得ないのではないか。
人間だれしも大なり小なり動物的な内面も持っているだろうし、個性の違いもぴんからきりまである。また、精神的な悩みを持っている人も多い。まあ、おおかみに変身してしまうというのは極端だとしても、思春期になれば、なにかしらそのような衝動をだれしも覚えるであろう。ヨーロッパには、人間が野生の動物に変身することへの恐れみたいな心理があって、カフカの「変身」とか作者は忘れたが「キツネになった婦人」などのいわば怪奇的な小説もたくさんあるようだ。そのような衝動・感情をすべてを「理性」で飼いならすのがベストとも思えない。「現実離れ」しているところはいっぱいあるものの、そういうところをいちいち批判していてはおちおち映画なぞは見ていられない。
ただ、あえて言えば主役の3人の心の葛藤みたいなものがもう少し描けていればより良かったのではないかと思う。この物語自体が姉の雪ちゃんの回想という形をとっており、ナレーションを通して彼女の心の遷移みたいなものが多少は表現されているが、母親の花さんはあまりにもあっけらかんとしすぎており、一見子供たちの悩みなどにまったくと言っていいほど関心がない(というより無知の)ように見えるし、弟の雨ちゃんが最後にオオカミになって自然の中に飛び出していくのも多少の伏線が描かれてはいるもののちょっと唐突すぎるのは否めないような気がする。もう少し親子での内面のやり取りがあってもいいのではないか。ただ、この程度の映画に明確な何かの教訓とか結論を求めるものではないと思うし、作者・監督が何を意図していたかは知らないが、自分なりに「よきに」解釈すればいいのである。娯楽+アルファ程度に考えて、自分がいいと思えばいいし、よくないと思えばよくないのである。というわけで、私は画像の美しさもあって、85点ぐらいの評価をしたいと思う。
ただ、孫のようなまだ年端もいかない子供の心にどのような影響を与えるのかはよく分からない。が、根拠はないものの、そんなに心配することもないのではないかと思います。私の孫が、この映画のどこが気に入って、再度見たいと思ったのか、聞いてみたいとは思うが、たぶん聞いても「なんとなく」とか「雪がかわいい」とかのレベルではないかと思うが、もうちょっとしっかりした返事があれば見上げたものである。
2012.9.1
Yukikaze
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