2009/09/28

読書のしおり ー その7 「 縄文の思考 」(1/5)

 読書のしおり感想 -その7 『 縄文の思考 』(1/5)  小林達雄 ちくま新書 735円  

著者小林達雄氏は、丹念な実証研究に基づきつつ、つねに考古学に新しい地平を拓いてきた縄文考古学の泰斗である。 縄文時代というのは、今からおおよそ1万2千年~1万3千年前から3千年前までの約1万年間の期間である。 1万年間もの間一つの文化的枠組みを維持しながら続くというのは、世界的にも珍しい例である。 この1万年間に隣の中国では、本格的な農耕が始ったり、素晴らしい青銅器を作ったり、というような技術が発達した。 また、遠くエジプトでは壮大なピラミッドが作られるというような時代に相当する。 それらを横目で見て、どうも日本列島の縄文文化というのは長い足踏み状態だった、外国のいくつかの地域では次から次に新しいことを始めているのに停滞していたのではないか、というような見方が長く続いてきた。 しかしと小林氏はいう。 どうもそれは一方的な見方ではないか。 文化、経済、社会というものは、どんどんよりよい形で、より高い水準を目指して一直線に進んで発展して行くものであるという、神話のようなものにとらわれすぎているのではないか。 おもに近世以降の西欧的思考をベースに進んできた帰結として、最近地球規模で顕在化しているさまざまな事象、問題点を背景に思考してみると、どうも縄文文化を一方的に遅れた、あるいは極めて内容の低い文化であると決めつけるわけにはいかないのではないか、むしろ一万年もの間充実し、内容を豊かにしてきたというように縄文文化をとらえることができるのではないか、と。 そういう意味で、本書は、著者渾身の作であると共に、縄文文化への恰好の入門手引書となっている。 以下、興味深かったいくつかにの点について、本書からの引用文がほとんどとなってしまったが、紹介してみたい。(つづく)

’09.10.1
   Yukikaze

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