2012/12/26

短歌・俳句の風景 -その124(2012.12.26)

今回は、宮柊二の有名な歌です。

『 昼間見し合歓(かうか)のあかき花のいろをあこがれの如くよる憶ひおり 』












  こういう経験はだれしもあるのではないか。 花でなくても風景とか、動植物、あるいは他人のちょっとした仕草とかいろいろあるかもしれない。 夜ふとんに入って、今日一日の事を思いめぐらすのもよくあることである。 また、それに次々と連想がつながっていき結局なかなか寝付けなくなったこともある。
  合歓は、夏に刷毛のような花を咲かせ、和名のネム、ネブは、夜になると葉が閉じること(就眠運動)に由来し、漢字名の「合歓木」は、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられたものだそうである。 
  この歌は、高野公彦が、「作者が合歓の花を追憶しつつ、それと重ね合わせるように一人の女性の面影を思い浮かべているような気配を感じる」と評している。 また、「暗くはない静かな抑圧された青春の情熱を感じさせる秀作である」という評もある。 いずれにしても、陰影・含蓄のあるいい歌であると思う。

2012.12.26
    Yukikaze


0 件のコメント:

コメントを投稿