2013/03/08

読書のしおり(その23)  『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』

読書のしおり(その23) 



 『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』  ファブリツィオ・グラッセッリ  文春新書 876

  表書きに「長い歴史を誇りながらも、今では『立派な』借金大国-。敗戦からの奇跡的な復興からアメリカ主導のグローバリゼーションまで。多くの共通点を持つ日伊両国に関して、在日歴20年以上のイタリア人建築家がウイットとユーモアに富んだ比較文化論を展開する。」とある。 私は、この本は、もう少し「くだけた」ものかと思って買ったのであるが、内容は意外と「堅い」感じのものであった。買う前は、日常生活におけるイタリア人と日本人の行動を一つ一つ具体的に比較しながら、「どっちがバカか」を論じるのかと思ったのであるが、実際に読んでみると、日本人に関する部分は最終章の第9章のみであり、それも一言で言うと日本の若い人に対する「警鐘」あるいは「お説教」的な内容である。
 内容は、イタリア北部のミラノ郊外に住む機械技術者の「ビアンキ氏」およびその家族、親類、友人達の日常生活を通して現在のイタリアの問題点を物語風に描いたものである。問題点の最大のものは、イタリアの国家財政の危機的状況である。その危機的状況に至った原因を冷静に分析しつつ、現代イタリアの抱えている問題点をイタリア人の目から適確に論じている。その原因として挙げられているのは、まず第一に、イタリア国内の「南北格差」であり、北部と中部の各州だけに焦点を当てると、一人当たりの国内総生産はイギリス、フランス、ドイツと肩を並べるというよりむしろ高いぐらいなのだ。第二に、債務超過だなんだかんだ言っても最終的には何とかなるのさ、という根拠のない自信にうらうちされた「何とかうまく立ち回る」究極の楽観主義などが挙げられており、著者は、特に南北格差については、かなり深刻な問題であり、その原因がそのままずばりイタリアの現状の問題点に直結しており、その解決なくしてはイタリアの再生はない、というような認識のようだ。
 日本との比較については、あまり明確な表現はないものの、「現在の日本における『格差社会』や一部に人間の『特権』を打ちこわし、外国から押し付けられた『グローバリズム』や『新自由主義』からも解き放たれた、日本の国にふさわしい、真の『民主主義』を実現するべきだ、と言いたいのです。それには、まず家庭の中で、この国と世界の『今』と『未来』について『真剣に話し合う』というところから始まります。つまりこれは、家庭から始まる『静かな革命』です。」という記述が著者の考え方を端的に言い表しているように思える。

  



2013.3.8
  Yukikaze

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