2012/06/20

短歌・俳句の風景 -その116

今回は短歌です。


『月日やは過ぐは行けども母父(おもしし) が
                                       珠の姿は忘れせなふも』

防人群像

万葉集にある防人歌(4378)で、中臣部足國という人の歌です。


「忘れせなふも」の「なふ」は「ない」の祖形だそうで、「忘れもしないことだ」という意味だそうです。

月日はどんどんと足早に過ぎ去っていくけれども、母と父の珠のような姿はいつまでも忘れることができない。
このような感情は何千年たっても変わることのないものだと思います。

「父母」ではなく「母父」というところがなんとも言えません。

私の父も学校を卒業してからは、四国の実家を離れて兵庫、福岡で会社勤めをして実家に戻ったのは両親が亡くなったずっと後でした。

そのような生活形態は今や珍しくありませんが、言ってみれば現代の「防人」と言えないこともないように思います。


2012.6.20
  Yukikaze



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