私が日立に就職してしばらくしてから日立に「日立郵趣会」というのがあるのを知り、私も切手を集めていたので、さっそく入会させてもらったが、Kさんはその「日立郵趣会」の幹事をやっており、彼とはその時以来の付き合いである。蒐集以外のことも含めていろいろと話をしたが、その中で面白かったのは、彼が見せてくれた「郵便による自分史」である。
これは、切手そのものではなく、おもに消印がテーマであるが、例えば自分が生まれた日付けの消印が押してある手紙そのもの(エンタイアともいう)を探す。と言っても自分宛て、家族あてのものは普通はないので、他人が他人に出したその日の消印がある手紙を切手商から購入することになる。しかし、その日は、自分だけの記念日であり、普通は大した金額にはならず、せいぜい50円、100円のオーダーである。しかし、これが公の記念日で古いものだと結構値が張って来るものもあるそうだ。いずれにしても、どういう日付のものを集めるのか、自分なりに集める方針・テーマみたいなものを決めてからスタートする方がいい、と彼は言っている。自分の歴史だけでは、どうしても日付までを特定するのが難しい(例えば、高校の入学式、卒業式の日付を特定するのは、小さい時から日記でもつけておかない限り困難なことが多いだろう)ので、世の中の出来事で自分が関心がある、あるいは何らかの関係があるものが中心となるのはやむを得ないのかもしれない。彼は、非常にもの持ちがよく、切手とは直接関係はないが、小学校時代の通信簿から高校の受験票なども保管しているようで、それらも含めてきれいにA4のファイル120枚に整理をしている。見せてもらって、感嘆ひとしきりであった。
最後に、彼から貴重なエンタイアを一ついただいた。太平洋戦争が始まった日、すなわち昭和16年12月8日の日付の消印がある手紙である。しかも、貼ってある切手は水力発電所を描いたものであり、Kさん曰く、「Yukikazeさんにとってはまさに渡りに船でしょう」、と。私が、水車の設計者であったからである。ちなみに、このエンタイアは切手商から買えば8000円ぐらいはするとのことであるが、探してもなかなか見つからないのでは、と。ということで、私も、自分の誕生日や父母や妹あるいは亡くなったが家内の誕生日のエンタイア探しから挑戦してみたいと思った次第である。
Kさんからもらったエンタイア |
切手、消印部分の拡大 昭和16年12月8日というのがはっきり分かる |
以上、OB会の帰りの最後に非常に楽しい思いをさせていただいたKさんに感謝します。
2013.5.27
Yukikaze
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